認知症の発症は高齢だけが原因ではない
世界保健機構(WHO)が示した認知機能低下および認知症のリスク低減
2019年にWHOが発表した『認知機能低下と認知症の リスク軽減に関する WHO ガイドライン』によれば認知症は高齢だけが原因ではないという部分が強調されています。
避けようがないリスクは遺伝・人種
「認知症の修正不可能な危険因子(リスク)には、遺伝子多型、年齢、性別、人種/民族性や家族歴(近親者の病歴等)などがある。重要なことは、年齢は認知機能低下の最も強いよく知られた危険因子であるが、認知症は加齢による自然な、あるいは必然的な結果ではない」とされています。
修正不可能な因子とは変えようがないもの。上に示されたもののうち年齢(高齢リスク)や性別(女性は長寿)、民族性(宗教、習慣、食文化)は理解しやすいと思います。
人種差については2022年春にカリフォルニア大学の研究グループが専門誌に発表したものがあります。
それによるとヒスパニック系、黒人、アメリカ・アラスカ先住民、アジア、白人の順で発症率が高いとのこと。
詳しい要因の解明はこれからだそうですが、民族性以上に国家体制、それにともなう医療へのアクセスなどが考えられますね。
遺伝子多型とは遺伝子を構成しているDNA配列の個体差(個人差)で変異により病気を起こす原因となるものです。
このうちアポリポたん白ℇ4は高確率でアルツハイマー病を発症します。
平均寿命が短い時代には発症前に寿命を終えていましたが、男女ともに80歳以上に延びた現在では逃げ切ることは難しくなりました。
家族歴、これはよく病院の初診時にもたずねられることがありますが家族の病歴というものです。
アルツハイマー病には家族性という遺伝性のものがあります。両親のうち一人がこの遺伝子変異を持つ場合、その子どもは1/2の確率で発症するというもの。一般的に若年性アルツハイマー病(65歳以下で発症するもの)がそのケース。
65歳以上で発症する場合もあるそうですが、一方で家族性アルツハイマー病は全患者さんの1%以下だそうです。
ある専門家は(大雑把な印象だが)と前置きした上で、アルツハイマー病は遺伝的因子80%、環境因子20%との印象を持っていると語っています。
低減可能なリスクとは?
WHOは「20 年間の研究により、学歴や、運動不足、喫煙、不健康な食事およびアルコールの有害な使用などの生活習慣に関連した危険因子が認知機能障害や認知症の発症と関連していることが示されている。
さらに、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、肥満やうつ病などの特定の病態は、認知症発症リスクの増大と関連している。社会的孤立や認知機能の不活発は、その他の修正可能な潜在的危険因子に含まれる。」としています。
このような修正可能な危険因子に焦点をあてたのは、これらの因子が認知症の予防や認知機能低下の進行遅延の標的となる可能性があることが根拠となっている。(ガイドラインより引用)
治療薬はまだですが、「認知症と関連していそうだ」というリスクが明らかになりつつあります。
次回はWHOが推奨している認知症リスク低減可能な12項目を紹介します。
参照1:RISK RIDUCTION OF COGNITIVE DECLINE & DEMENTIA WHO GUIDELINES 外部リンク
参照2:認知機能低下と認知症の リスク軽減に関する WHO ガイドライン 邦訳版 外部リンク
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